『身体に痛みや病が起きている時、
人間の臓器などの体内には”虫”が棲息している』
450年前、大阪府茨木市に
茨木元行(いばらき・げんぎょう)という鍼治療の名医がいました。
彼は「針聞書(はりききがき)」という
鍼治療に関する東洋医学書を書きました。
戦国時代、永禄11年(1568年)のこと。
その本の第3部の中には、
想像上の寄生虫が色鮮やかに描かれています。
人間が病気や体調が悪い時は、
臓器、体内に虫が棲息し、その虫がとりついた仕業
という考えで、
陰陽五行説に基づいてユーモラスに描いた図鑑です。
人の体内に潜んで病気を引き起こすムシ達。
そのムシ達を“ハラノムシ”と呼びます。
例を挙げると、「腰抜の虫」(こしぬけのむし)
“腰が生息域”で
その姿はオニヤンマの身体がウニョウニョと伸びたような形。
長い胴体で背骨に巻きついて締め付けます。
そして
尻尾のトゲで突き刺してギックリ腰(腰抜け)や尿路結石を引き起こします。
突然の激痛で腰が抜け、
息が詰まって胸元が苦しく、冷や汗をダラダラと垂らします。
この虫の取っ払い方(治療法)も書かれています。
※「戦国時代のハラノムシ―『針聞書』のゆかいな病魔たち」から引用
などなど、
このようなオモシロおかしいハラノムシの絵図が63点も描かれているのですが、
実はNHK「チコちゃんに叱れる!」でも紹介されています。
歴史を掘り起こせば、
全国の鍼灸師のルーツは、茨木元行にたどり着くのです。
そのような経緯があり、茨木は「鍼の聖地」と呼ばれるようになりました。
茨木神社にそれらの資料があります。
また、
茨木で描かれたユニークなハラノムシは子供たちに人気があります。
「ハラノムシ」をモチーフに
Tシャツ、バッグ、コースターやランプシェードなどを
アートスカラtakaeでデザインされグッズ販売も行っています。
⬇︎アートスカラtakaeさんのInstagramです
ハラノムシは
茨木ひいては大阪の観光大使を担うほどの魅力もあるのです。
今ではLINEスタンプもあります。
そのハラノムシを魅力を広め、
茨木を盛り上げるためのの講演会が
「初春ハラノムシ祭まつり」として2020年2月9日に開催されました。
当時放送されていた大河ドラマ「麒麟がくる」の
主人公、明智光秀と鍼灸にまつわる落語も演じられました。
今後、茨木の年中行事として「ハラノムシまつり」を継続し、
市民・府民さらには国民の皆様への認知度を高めていきたいと考えられています。
戦国時代の治療家は
現代のようにレントゲンやMRI、顕微鏡で病原体を確認することができず、
脈、舌や顔色、しぐさで病気を判断して
鍼やお灸、漢方薬で治療をしていました。
科学的に病気の判断・治療ができなかった時代、
病を虫の形で表現して正体を明らかにして、
患者が安心して病気と向き合うための治療法の一つでもありました。
ハラノムシたちは不思議な形をしていて、かわいらしく見えますが、
時には人を死に至らしめる、恐ろしいムシもいて油断ができません。
自分の身体にいると思うとゾッとしますが
そうは思いつつ、でもなんだか憎めない。
おどけた顔つきでキモカワでクスリと笑えます。
鍼の聖地であるここ茨木で
そんなムシたちの声に耳を傾け、
這い出す治療を受けてみてはいかがでしょうか。
Amazonや楽天ブックスでハラノムシを楽しむことができます。